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カーテンごしに薄く暁の光が射している。
この窓辺でこうして朝を迎えるのも最後なのだと、感慨に浸らずにいられない。
夜通し友人たちと語らい、旧知を訪ねて回り、夜明け前にようやく眠りについたのだが、不思議と目も意識も清明だった。

身支度をして、二人で簡単な朝食を摂り、鍵を掛けて門を出る。
――鍵は、途中で捨てるつもりだ。

思った通り、カトゥサは手ぶらも同然だった。
腰に下げた酒と父親の形見の刀、申し訳程度の布鞄。
どうせあれにも酒とお気に入りの肴でも入っているのだろう。

「行くか」
「うん」
「忘れ物は無いだろうな」
「多分……あっ!ちょっと待って」

彼女に貰った結晶。
紛れもなく目の前の男の、魂の破片。
それを今使ってみようと思った。
港は人が多くてきっとそれどころではないはずだから。


包んでいたスカーフを解き、宝石を暁の光に照らす。

きらり、とそれが光を弾いたかと思うと、
何かを念じる間もなく。
眩い真紅の粒子が奔流のように溢れ出、私と彼を包み込んだ。


“其は彼より預かりし魂のカケラ。絶対にして永遠なる契約の証”
“託しましょう、誰よりも深い『繋がり』を望んだ貴女へと”

込められていた彼女の声が聞こえたような気がした。

刹那、光が収束する。
同時に何かぞくりとするほど得体の知れない熱を全身に感じた。
が、それもすぐに収まった。

彼は不思議そうに私を見ている。
何かが変わった訳ではない。
だが――私は確かに、「それ」をこの胸に宿していた。

(ゼレナさん――)

不意に涙がこみ上げる。喜びの涙、それ以外の何物でもない。

(ありがとう)

本当は大声を上げて泣きたい気分だった。

「いいよ。行こう」
「あぁ」
「…ねぇ私、ちょっと寿命が延びたかもよ」
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