2017 07123456789101112131415161718192021222324252627282930312017 09
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「渡したいモノがあるのです」

どこか秘密めかした微笑。
差し出された、拳大の宝石。
何かの結晶に見えるそれは、太陽の真紅と月の紫を思わせる輝きを放っていた。

指先が触れた瞬間、ぴりっと伝わったそれは胸の痛みにも似て。
その宝石の正体が何であるか悟った。

「……これ、は」

言葉にならなかった。

(これは、彼の魂の)

彼女が私をじっと見ている。何か言わなければ、でも。
目が離せない。ただ鼓動だけが酷く高鳴っている。

(何て綺麗なんだろう)

これが、ひとの魂の結晶。
人の身では絶対に不可視である、人格を形成し心を動かすエネルギーの源。

『貴女のココロを知ってしまったら、我に出来る事は此れしか無いと』

数日前の告白。
そう、本当は――ずっと嫉妬していたのだと。
生きている彼の心臓に触れる事が出来た彼女に。
私には叶わない方法で、彼との強い絆を得た彼女に。
彼女の言動に彼の面影を思わせる片鱗を見るたび、どれだけ心を乱された事か。

けれど。
それは既に彼女に溶け込み、彼女らしさとして昇華しつつあったのだ。
そして私はそんな彼女の人格を慕わしく思っていた。
嫉妬と親愛。矛盾した想いを抱えて。


あぁ、これを無理やり取り出した彼女の何と痛々しい青白さだろう。
その気怠い眼差しが、失われたものの熱さを物語っている。

「…ここまでして欲しいなんて、思ってなかったのに」
『フッ、そのような貌をするモノでは無い』

衝撃が去って、満ちて来たのは至上の幸福と感謝の想い。

そっと包むように頬を寄せる。
彼女は満足気な視線を投げ掛けていた。


『船に乗る直前に使ってください』

使う、というのがどういう事なのか、どうなるのか分からなかったけれど。
頷いて、大事に大事にスカーフに包んだ。
布を通してもなお、それは脈打つように温かかった。

生命の破片。
こんなに尊く愛しい贈り物が他にあるだろうか。
スポンサーサイト

TrackBackURL
≫≫  http://laia.blog38.fc2.com/tb.php/264-419d341f
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。