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箒星の行方 - 4 - 2007-08-25 Sat
旅慣れた滅鬼殿曰く、財産を換金可能な価値ある物に換えて持って行くべきだ、と。
確かにそれは尤もだ。
だがあまり高価そうなものを荷物に入れていては、何が起こるか分からない。
だから目立たないくらい、最低限にしようと思った。
宝石類は出来るだけ下着や服の裏に縫い付けていこう。

必要なものは滅鬼殿が持っているだろうというある種の他力本願があったとか、なかったとか。
―――

居城の部屋で荷造りをする。
生来の捨てられない性格をこの時ほど呪った事はない。
あれにも、これにも、思い出が…
…文字通り心を鬼にして処分に掛かる。

形見の剣とナイフは言うまでもなくとして。
ようやく他に持って行くものを決めた。

まずはアンス殿に貰った、ドラバニア建国祭の記念硬貨。
ドラバニアは生まれ育った我が故郷。
ついに仕官は叶わなかったものの、憧れだった国。
街に着いたら装飾品の店を探して、あの時話したようにチェーンを付けよう。

タシュンカ殿に貰った糸巻き。彼の部族のお守りなのだという。
遠い海の向こうへ行っても、この大陸と見えない糸でつながっている気持ちがするだろう。

ラケさんの手作りキーホルダー、
カトゥサからの初めてのプレゼントだった緑の光る石。
次々に手に取り、包んで鞄に仕舞う。

キララに貰った白いリボン。
…これは誰にも打ち明けていなかった心の秘密。
いつか私が純白のドレスを着る晴れの日が来たら――この髪に飾るつもりでいたのだ。
我ながら恥ずかしい幻想だと思う。
その日は永遠に来ないかもしれない、それでも構わない。
何となく持っていたくて、鞄に仕舞った。

小物がほとんどな荷物の中で、軽いけれど一番かさばるもの。
キララと来夢に貰った、クマのぬいぐるみ。
20歳の誕生日のプレゼント。私はビアンカ、と名付けていた。
限りなく慈愛に満ちた魂が宿っているような気がする。
私に子供が出来たら、その子の最初の友達になってもらいたい。

日記帳といくつかの手紙。
住所録は泣く泣く手放した。
使う事はないだろうけど、大事な人たちの名前が連なったものだから持って行きたかったのだ。

そして追憶の小瓶――あの日の戦場跡でカトゥサと語らい、私が拾った折れた牙。
統一の誓い果たされた後も、ずっと持っていたけれど。
もうこの先は要らないだろう。
瓶のまま、城の中庭深くに埋めた。

餞別にともらったアレス殿からの蒼の酒、グレイ殿の大福とエルネルのお菓子は鞄の上の方に詰める。
行き掛けにマノンさんの店でサンドイッチを買おう。
船旅の楽しみが増えた。


手紙を書く片手間、一つ一つ、しなければならない事をこなしていく。

奈々さんから継いだ「絆」の土人形に関するノートを憩いの間に置いた。
この先は大陸に住む人々が見守ってくれればいい。
商人ギルドの企画室を閉じた。
住宅相談所に行って、月末の城の引き払い契約。
倉庫の利用者の移転先を探し、ルビーには新しい保管所を建ててもらった。
この地に不慣れな人に使ってもらえれば本望だ。


そして、前から胸に秘めていた一つの決意を実行する事にした。
出発前日の午後、ABtに予約を入れてもらう。
何かと惜別する想いがした。
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