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箒星の行方 - 1 - 2007-08-16 Thu
夏の盛りの、或る日。
ナイトメア領西部諸島の一つ、ドーレジアに一隻の難破船が漂着した。

乗員の大半は人間種の商人と船員。他に聖職者、老いた魔人の魔術師が一人。
積荷は珍しい交易品に美術品、およそ実用的でなさそうな武具。
異国――否、この大陸のものではない、
それは遙かな異大陸の商船だった。

船は徒に民心を騒がせぬよう密かにユリマナへ移送され、乗員は王宮へ連行された。
敗戦中とはいえ、どの国もある程度の自治を認められていたのである。

退屈を持て余していた稚き夜の女王は、異国の船とそれが運んで来たものたちを甚くお気に召したらしい。
女王の見聞を広める為の話し相手という賓客待遇で滞在を許した。
勿論、それなりの警戒と監視を伴うものではあったが。

彼らの話す言葉は耳に馴染まぬ響きがあるものの、意思の疎通は可能であった。
この大陸を目指していた訳ではなく、嵐によって流されたのだという。
取り調べの結果害を成すものでないと判明した以上、留め置く所以は無い。
特に公に取り沙汰されるまでもなく、彼らは自国への帰還を許可された。
…もっとも、戦乱真っ只中のこの地において、
遠い海の向こうの異国へ干渉するだけの余裕があるはずもなかった。

異邦人たちは、船の修繕と復路の為の準備に暫くは逗留するのだろう。
地元の民の好奇の目に見守られながら。

ユリマナ港の一角、そんな人集りの中。
私もまた、気心の知れた2人と共に異国の船を見つめていた。

――

夕食を取ろうと連れ立って店に入るも、頭から離れない。
賑やかなさざめきと熱気の中、どうしても話題はさっきの船の事になる。
3人で話すうち、静かに胸に湧き起こってくる不思議な興奮。
居ても立ってもいられない、
ある種の予感めいた――

「…出港は今月最後の日…って、言ってたよね」

グラスに掛けた手を止め、一呼吸おいて呟く。
顔を上げた彼らもまた、同じ色の瞳をしていた。
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